去年の9月、突然プロポーズされた。
「ずっとやりたかった、でっかい仕事が決まったんだ! 結婚しよう」
妹尾真二32歳、浅田チカ28歳。
街をあげての音楽イベントの仕事が舞い込んできた。
真二がどうしてもやりたかった仕事のひとつ。開催は9月。
うれしさと勢いで、その時、真二はチカにプロポーズした。
しかし、あのプロポーズ以来、話は一向に進展していない。
それどころか、真二の仕事は益々忙しくなっていた。
「プロポーズしたこと、忘れてるの?」
問い質したい。が、チカは真二にそれを聞くことができない。
女友達が、心配して休みの日にドレスや指輪を見に行こうと
誘ってくれるが、真二にその素振りが全く見えず
無駄なことをしているように感じて虚しくなるチカ。
しかし、真実を知らないのは、実はチカだけだったのだ。
真二がプロポーズをした意味とは?
何も言わないことの真実は?
結婚式は、9月21日、チカが29歳になる誕生日にグレージュで用意されていた。